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■ 平成30年度 顕彰
第27回「全税共 人と地域の文化賞」
第27回「全税共 人と地域の文化賞」贈呈式が、2019年2月18日帝国ホテル東京にて執り行われました。
本年度は食文化分野から山本彩香氏が受賞されました。
賞金100万円(全国税理士共栄会文化財団)副賞100万円(全国税理士共栄会)
山本彩香(沖縄県)
~「琉球料理」の伝承および発展に対する貢献~
かつて琉球王国として周囲の国々と交流し独自の文化を創造してきた沖縄は、耕土少なく水に苦しみ漁獲も珊瑚礁に阻まれ且つ台風に遭う環境を負いつつ、逆境をバネに本土や中国、南方諸国から食材・調理法を摂取し地元産物に巧みに融合させ独特の食文化を生み出してきた。厳しい暮らしの中で粗材であっても心を込めて手を掛け、料理を「命薬(ぬちぐすい)」と尊んで家族を養い客人をもてなした。その伝統が旅客の宿所ともなった辻花街に受継がれた。
花街では家庭の情味に宮廷の洗練を混じえた情趣の沁みる手料理が客を楽しませ沖縄の味の「至極」と評されたが、その特性は戦後花街の廃止と共に失われつつあった。辻の隠し味の名人と謳われた﨑間カマトさんの養女である山本彩香氏は、その味覚こそが郷土の「こころの表出」と確信、母の膝下で後継者たろうと決意し修行する。山本氏は琉球舞踊界を背負う名花と謳われていたが、踊りも料理もやり直しのきかぬ緊張感の中で創る喜びは同じと言い調理に徹する覚悟を披瀝した。折から簡便食品の普及もあり郷土の味覚が失われる風潮が見えたため、沖縄料理の本道を極めその特色を生かすため自身の店を開き、味を深め新たな料理を案出し琉球料理の第一人者と讃えられた。作る人の「手油(てぃーあんだー)」を込めた心の深さが美味を生む。「てぃーあんだー」とは琉球料理をささえる理念の核心であり「隠し味」そのものであると山本氏は語る。
2009年、初心に徹し料理道の深層を極めたいという一念から新たな店を後継者に託し、日々の研鑽と島々を行脚して集落料理の研修と新たな食材の発掘に専心、現在も国内外問わず出向いて琉球料理を広める活動を続け、沖縄生活文化の魅力と輝きを心身を賭けて顕現している。
■ 平成30年度 助成
①特定非営利活動法人Ballet Noah(群馬県高崎市)
平成16年に市民とプロのアーティストの協働の場を提供するというコンセプトで設立。自治体が実施する文化体験事業の登録団体として学校や児童館等に派遣され、東日本大震災の被災地や福祉施設で公演を行ってきた。
今回の公演は市民参加型の公募による60歳以上のシニアからなり、自分自身の人生経験から生まれてくる表現を反映させた作品。各地域の他団体と連携して市民の芸術参加の活性化を促進することを目標としている。
②国づくり狂言プロジェクト実行委員会(愛知県名古屋市)
2016年4月に発生した熊本地震により多大な被害を受けた熊本城の復興を祈念し、同県民の活力向上及び心の支援を目的とするプロジェクトである。熊本城主だった加藤清正公が能楽をこよなく愛したことから、尾張発祥である和泉流狂言師と名古屋圏在住の約10名の子ども達が熊本城で狂言を上演する。
さらに2年後は新作狂言を創作し募集とオーディションで選ばれた子ども達が地域の歴史を継承するプログラムを企画している。
③演劇組織「夜の樹」(東京都台東区)
現代人が忘れがちな「他者への愛と理解」から派生する、代表者和田周氏の卓越した人間観察力を反映した優れた戯曲による演劇を上演するという、確固たる信念のもと40年以上活動を続けてきた。
「他人への愛と理解」への渇望が作品には溢れており、観客は時間と空間を共有する中で現代人が忘れがちな他者を思う気持ちと他
者へ興味を喚起させられるという「力強い演劇」であることは間違いない。
④木村 悠介(東京都江東区)
演出家、京都造形芸術大学卒。ベルリン芸術大学で演劇・ダンス・美術・映像において先端的なメディアパフォーマンスの創作を学び、国内では上演が難しい実験的な舞台を演出してきた。メディア社会のリアリティや人間の性や身体について深く切り込む作品づくりが特徴である。
今年京都では独自の「箱なしカメラ・オブスキュラ」を使用し3人の俳優が同じ作品を演じる独創的なオムニバスを制作する。
⑤くりんぐりんぐ(KlingRing)(茨城県ひたちなか市)
2007年に結成。同県の笠間市において2008年から2017年まで街角コンサートに出演し小学校への出前演奏やイベントにも多数出演してきた。クラシック音楽を大人から子供まで楽しめるよう様々な工夫を凝らし、2016年には舞台に客席を設け演奏者と同じ目線を体験できる演出をおこなった。
また団員は地元在住の女性のみで構成され一流の指導者に師事を仰ぎながら演奏技術を磨き、男性ソリストにもひけをとらない。
⑥特定非営利活動法人愛知人形劇センター(愛知県名古屋市)
平成元年、損害保険ジャパン日本興亜株式会社名古屋ビルにオープンした「人形劇場ひまわりホール」の運営組織として設立。「'88世界人形劇フェスティバル名古屋」の成果を受け社会貢献活動拠点として造られた人形劇専門劇場であり、平成13年にはメセナ大賞を受賞するなど文化振興と地域貢献の一躍を担う。
昨今は演劇関係者や行政と連携し舞台芸術活動に関わる民間拠点となっている。
⑦アントネッロ合同会社(埼玉県川口市)
1994年に古楽アンサンブル<アントネッロ>を結成。中世からバロック初期のヨーロッパ音楽を専門とし国内では演奏機会の少ないオペラ創世記の作品を川口市において上演、新たな文化の発信地として認知度を上げる。
ダヴィンチ没後500年を記念しダヴィンチが手稿に残した舞台美術の再現と楽器「リラ・ダ・ブラッチョ」を使用した『オルフェオ物語』を蘇演する。古楽時代の音楽の魅力を多くの聴衆に広める活動をしている。
⑧TRANS-KOBE実行委員会(兵庫県神戸市)
2007年から5回にわたり神戸港エリアにて現代アートによる芸術祭を開催。今回のプロジェクトは市街地西部地域(兵庫区南部及び長田区南部)にて開催し、芸術文化による地域の魅力の再発見・地域活性化を促す。
今年はラグビーワールドカップが開催され世界からも注目が集まる中、世界的なアーティストによる創作活動や市民・学生・地元企業・芸術団体と連携したアートプロジェクトを世界に発信する挑戦的な試みを行う。
⑨樹の会(神奈川県横浜市)
「樹の会」は大学合唱団をはじめ10~30代で構成されるユースクワイア、幅広い年齢層の混声・女声・男声合唱団などで構成されている。
海外公演では、演奏のクオリティと西洋の伝統と日本の秀逸な現代作品とで構成されたプログラムが大きな反響を呼び、コンクールなどでも高い評価を得た。近年は新分野であるシアターピース、合唱オペラ、合唱劇というものに注目し意欲的に取り組んでいる。
⑩南砺市いなみ国際木彫刻キャンプ実行委員会(富山県南砺市)
南砺市では1763年瑞泉寺の再建を契機に木彫刻が盛んになり現在もその技術を伝えている。工房と町屋が並び木彫刻をほどこした看板や表札が至る所に飾られ町全体が「木彫刻美術館」のようになっている特色が評価され2018年『日本遺産』に認定された。
このキャンプは1991年から4年に1度開催され、国内外の木彫刻作家を招聘し原木から作品完成に至るまで野外で公開制作を行い文化交流による地域活性化に貢献している。
⑪公益財団法人武蔵野文化事業団 武蔵野市立吉祥寺シアター
(東京都武蔵野市)
ダンスと異なるジャンルのアーティストによるコラボ作品を創造することで、新しい側面を探求し提示すると共に次世代を担う人材の育成とダンス界の活性化を目指す。
2020年1月の公演ではリハーサル公開、ワークインプログレス開催、創作過程を疑似体験できるワークショップ開催などにより作品を広く外部に公開し、市民が能動的に文化芸術と関わる機会を設け「鑑賞の場」でなく「創造の場」としての劇場を提示する。
⑫公益財団法人草加市文化協会(埼玉県草加市)
来年の東京オリンピック・パラリンピックを前に日本の芸術文化・芸能に世界の関心が集まっている。オペラやオーケストラなどは隆盛を極めているが、日本固有の音楽である邦楽は衰退の一途をたどっているのが現状である。
その邦楽の復権を図るため、平成28年から邦楽演奏家を一堂に会した演奏会「日本の響き・草加の陣」を開催し内外にその魅力を発信し、同市における「地域創生」を目指す。
⑬鈴木 竜(東京都大田区)
英国でダンスを学び2012年のロンドン五輪開会式でダンサーの一人として出演、また若手中心のカンパニー「eltanin」を主宰し世界各地で創作活動を行う。また振付家として数々の賞を受賞し、その作品は国内外で多数上演されている。
同氏の活動は他の若手振付家等の刺激になりダンス界全体の活性化にも繋がるなど、国内外から大きな注目を集める若手振付家・ダンサーである。
⑭特定非営利活動法人プロジェクトFUKUSHIMA(福島県福島市)
東日本大震災後の福島の現状を発信しスローガン「未来は私たちの手で」を掲げる。
毎年8月に開催しているフェスティバルは夏の風物詩となり県内外から多くの参加者が集う。ボランティアや県内外の人々の協力により縫い合わされた“大風呂敷”と呼ばれるパッチワークを広げ、会場作りやオリジナルの盆踊りの生演奏など参加者全員で作り上げることで当事者性を高め、地域や年齢を超えたコミュニティを形成している。
⑮「塒出」実行委員会(東京都世田谷区)
コンテンポラリーダンスで圧倒的存在感を放つ福留麻里と、大胆で前衛的な芸術探究を進めてきた劇作家・村社祐太朗による「塒出」(2018年)の再制作と京都公演。
音楽が一切ないオリジナルな盆踊りの「リピートする所作」と頭に残る名詞の「ことば」のみを提示する舞台、呪術的なライティングの際立った美しさと灯体が出す音が音響を兼ねるよう環境設定されているという、非常にコンテンツの立った内容である。
⑯ 劇団速度(京都府京都市)
演劇・ダンス・アニメーションなど異なる表現の技術を持つアーティストで構成され、演出家や出演者などの役割を固定しない流動的な創造のスタイルを採用した作品を発表。様々な技術の集合により実現される「自由」と「多彩」こそがこの劇団の最大の特徴となっている。
劇団という集団の形式を採用しながら演劇の枠組みを内側から更新する試みが認知され、最も注目を集める若手団体のひとつ。
⑰micelle(北海道札幌市)
2014年に櫻井ヒロと河野千晶により結成された接触と即興の「コンタクト・インプロビゼーション」のユニット。教育機関や福祉施設と連携し小中学校や児童養護施設等でのワークショップ、国内外の振付家等とのネットワークを通じ招聘公演の制作等を行う。
市民によるコミュニティダンスプログラムのファシリテーターを務め、劇団やダンスグループ等の振付等を通しコンテンポラリーダンスの普及と振興に取組んでいる。
⑱よなご映像フェスティバル実行委員会(鳥取県西伯郡)
平成20年から米子市において毎年開催、観る機会の少ない自主製作映画・実験映画・ビデオアート・アニメ等を上映するなど地方映画祭としてはユニークな存在である。
地元の高校・大学や地元出身作家等の作品も取り上げ、地域からの情報発信の役割も担っている。特に地元の小学生の課外授業として映像制作を指導協力したことは、映像のリテラシーを早い時期から学ばせる意義深いものといえる。
①大草神楽子ども研究クラブ(広島県三原市)
約270年前に広島県央から備後地方に発祥したと伝わる備後神楽豊田流(三原市民俗無形文化財)は、明治初期まで神官が継承し以後民間に舞継がれた。
昭和53年に大草小学校の児童を対象に発足、現在では他市からも小学生が参加して稽古に励んでいる。また指導は礼儀作法にまでおよび、卒団生からは多くの神楽師を輩出するなど郷土伝承文化の継承保全の一翼を担い地域の行事では欠かせない存在である。
②大土地神楽保存会神楽方(島根県出雲市)
古くは大土地荒神社の神主によって舞われていたが寛政10年(1798年)ごろからは氏子達に受継がれ、300年以上途絶えることなく継承されてきた。平成17年には重要無形民俗文化財に指定された。
大土地荒神社例大祭や出雲大社例大祭での奉納神楽などを行い、平成5年はフランスの「パリ日本文化祭」にて披露し神楽の普及や技術習得の機会を増やし、また神楽面や衣装等の保存継承活動にも取組んでいる。
③仙臺伝統裸参り保存会(宮城県仙台市)
「裸参り」は東北各地で実施されている年中行事である。約300年前から南部杜氏を中心に始まった様式が160年前に仙台の酒蔵に伝わったとされている。
毎年1月14日「松焚祭」に冷水で身を清めた70~100人が白装束にしめ縄、含み紙を咥え鉦を鳴らす等して歩き大崎八幡宮に参拝する。伝統と格式を重んじ古式に則った姿勢を貫く同保存会の存在意義は大きく、他団体に作法・所作のレクチャーも行っている。
④久慈秋祭り に組山車組(岩手県久慈市)
この祭りの起源は600年以上遡り、現在の山車を中心とした祭礼行事の形になったのは明治後半といわれている。
久慈市内の町内会や有志からは毎年製作された8台の山車が参加し奉納される。山車組には幼児から高校生までが参加し晴れ姿を披露、また当日は学校の授業が休講になるという地域をあげた一大イベントでもある。に組では4月下旬から山車の製作を開始、年長者が指導しながら保存継承に努めている。
⑤浦瀬町奏楽保存会(新潟県長岡市)
明治初期に同県弥彦村にある弥彦神社へ舞の教えを請うため出向き、その後は歴代の舞連中によって受継がれてきた。
その伝統を維持・継承していくため2001年に保存会を設立、毎年5月の日枝神社と8月の諏訪神社の各祭りにて舞を奉納している。30種類ある演目のうち小学女子児童による「稚児舞」は大変人気がある。
郷土民俗芸能公演会等に出演するなど活動の範囲を広げ後継者の育成に尽力している。
⑥ふるまち祭典組(長野県下伊那郡)
松川町にある八幡大神社に3月の春季例祭及び9月の秋季例祭にて獅子舞を奉納している。平成15年に少子高齢化により活動が維持できなくなったため、地元の若者たちが郷土芸能を存続すべく新たに組織を立ち上げた。
「ふるまち祭典組」が取り組む獅子舞は地域住民、とりわけ子どもたちの郷土愛の醸成を目的とし、古町地区台城まつり等で獅子舞を披露、さらに地域の枠を超え南信州獅子舞フェスティバルに出演している。
⑦照喜名 朝國(沖縄県那覇市)
8歳から父である安冨姐流七代目・照喜名朝一(人間国宝)より琉球音楽の指導を受け、昨年史上最年少で県指定無形文化財「沖縄伝統音楽安冨姐流」保持者に認定された。
主宰する「琉球古典安冨姐流音楽研究朝一会」は、ハワイ・ロサンゼルスにも支部を置き多くの師範や教師を輩出し地元沖縄を拠点にアメリカ・中国でも公演を行っている。更に東京教室は沖縄と他地域を文化的に繋ぐという重要な役割を担っている。
⑧新原太鼓連(埼玉県秩父郡)
小鹿野町は江戸時代末から明治にかけて生糸の町として繁栄し、絹大市の発展と共に祭りも盛大に行われ豪華絢爛な屋台・笠鉾が建造された。この屋台・笠鉾の曳行に欠かせない祭り囃子として秩父屋台囃子が作られた。
同団体は「小鹿野春まつり」では2日間の笠鉾曳行にて朝から晩まで太鼓をうち、「小鹿野夏まつり」では神輿渡御にて道中囃子を担当するほか郷土芸能祭などにおいて活躍している。
⑨出城虫送り太鼓保存会(石川県白山市)
園児から高校生までの子ども達でジュニアチーム「蛍心(ほたる)」を結成、大人と一緒に演奏する活動のほか子ども和太鼓体験教室を開催したり、日本太鼓ジュニアコンクール県大会で素晴らしい成績を残している。
県内においても精力的に活動し太鼓文化の発展・普及に努めるほか、伝統行事「虫送り(農村で作物につく害虫を追い払い豊作を祈願する呪術的行事)」を復活させ毎年夏に松明を掲げて太鼓の練り歩きを行っている。
① 住吉蔵部(大阪府大阪市)
住吉区には個人所有の蔵が多く残存していたが、維持・管理の手間や費用等の問題から2011年よりその数が減少している。当団体はその蔵に着目し歴史や文化を背景とした様々な地域資源や街並みの魅力を再発見し、保存継承していくことを目的としている。
蔵の実態調査、利活用調査などを踏まえ蔵を通じて地域の歴史や文化を継承していく意義を伝え、他区との類似性や差異性を明らかにし地域ごとの歴史性や文化性を検証する。
②組紐・組物学会(京都府京都市)
組紐は世界中で独自の発展を遂げ日本では特に高度に発展し世界に類を見ない美しさと複雑な構造を有している。
組紐国際会議は世界各国の作家・研究者が集いデザイン・製作技法・歴史などの情報を交換し日本の組紐を世界に発信する役割を担う。今秋10月には組紐産業の町である三重県伊賀市にて開催、日本の組紐の素晴らしさを世界に発信する絶好の機会であり国際会議を地方都市で開催するという挑戦となる。
③大堀相馬焼陶吉郎窯 近藤 学(福島県いわき市)
大堀相馬焼は元禄3年(1690年)に相馬藩領大堀地区(浪江町)で生み出された300年の歴史と伝統を持ち、昭和53年に国の伝統的工芸品に指定された。
東日本大震災での原発事故のため今も帰還困難地区に指定され職人も激減、廃業や散り散りに避難することを余儀なくされた。伝統産業が土地を離れることは致命傷だが、伝統の継承と新たな歴史を構築するため避難先で開窯し分業体制での復興と再生を目指す。
④角田 純一(福島県耶麻郡)
会津地方は古来より伝統産業が盛んで特に会津塗は隆盛を誇っていた。しかし東日本大震災で発生した原発事故による風評被害により伝統産業も打撃を受け、更に少子高齢化に伴う職人の減少や後継者不足により衰退の一途をたどっている。
工房を裏磐梯に構え地域の持つ魅力を作品にして全国に発信し、同時に体験教室を通して漆器装飾の技術をひろめ会津塗の普及と後継者育成に尽力している。
⑤茨城県陶芸美術館友の会(茨城県笠間市)
陶芸作家・小野寺玄の作品は日本の心を伝える品格があるといわれ、天皇陛下からオバマ前大統領に贈られたこともある。須恵器に由来する燻し焼きを現代において追及した現代陶芸史を語る上で欠かせない作家である。
同美術館では小野寺氏の作品を後世に残すため各地の主要な美術館に寄贈し、また全国各地で採取した200点にのぼる土コレクションを若い作家達のヒントとなるべく標本化するなどのプロジェクトを進行中である。
⑥水野 練平(北海道白老郡)
アイヌ民族博物館にて古い工芸資料等の研究をしながら伝統的な木工芸作品の複製製法に従事してきた。アイヌ木工芸コンテストでは3年連続でグランプリを獲得、史上最年少で伝統工芸家として認定を受けた。
自身の工房を開設し博物館や大学からの依頼を受けアイヌ木工芸作品の複製品を製作、中でも楽器「ムックリ」は昔ながらの手法を貫徹し非常に高い完成度を誇る。アイヌ伝承文化の継承、後継者育成に尽力している。
⑦淀江傘伝承の会(鳥取県米子市)
文政4年に始まったとされ年間30万本以上を製造していた代表的な産業であった。市指定無形文化財として全工程を伝統的技法で製作しており海外からも注目を浴びているが、高齢者数名の技術者が技術を継承しているのが現状である。
淀江傘の工芸技術を消滅させないため製造工程の中で最も特徴的な糸飾りの技術を映像化し、伝承候補者の育成や小中高生への地域教育に活用していく。
①飯田 むつみ(奈良県奈良市)
『古事類苑』に「東大寺大仏を建立した聖武天皇の時代、大和の国は農家でも茶粥を食す」とあり、東大寺二月堂修二会に参籠する練行衆の献立にも茶粥の記録が残っている。
西日本各地では「おかいさん」の愛称で親しまれ季節によっては野菜や芋等を入れて食し、17世紀中頃には江戸で評判となった。
時代の変化と嗜好の変化等もあり、作り方を知らない世代が増えたため「茶粥」の伝承に尽力している。
②特定非営利活動法人NPOホットライン信州(長野県松本市)
信州こども食堂ネットワークは長野県内全域において子どもを中心とした幼児からお年寄りまでの交流の場であり、食事・食育・学びの機会を提供している組織である。
各地域で高校生・大学生をはじめシニア世代や高齢者が活動に参加し、手づくりの暖かい食事を提供し孤食や偏食を予防するなど心を育む交流を生んでいる。
平成29年度食育白書の事例にも掲載され、政府や各市町村からも高い評価を受ける。
③籔の傍(大阪府箕面市)
江戸時代から京都府向日市を含む乙訓地域では竹林が広がり建築材や細工物に利用されていた。タケノコ生産だけでなく京もの指定工芸品に指定された「京銘竹」の生産本場であり、栽培法は明治時代初期から続く“京都式軟化栽培法”である。
しかし近年は輸入タケノコが安価で購入でき消費の9割を占めているため、放置畑を再整備し栽培技術や調理法など伝統食文化を習得、新たな価値を見出す活動をしている。
④公益財団法人新潟市芸術文化振興財団アーツカウンシル新潟
(新潟県新潟市)
新潟市の文化芸術活動の支援や調査研究、事業の企画支援等を行い、東京オリンピックに向けた文化プログラムにも取組んでいる。
今秋、同市で開催される国民文化祭に向けて北方文化博物館に残っている婚礼料理の献立から地域の食文化を知り、阿賀野川舟運の物流や生産している作物など食を取り巻く状況を調査し、料理を復元することで若手料理人の育成に繋げたい。さらに復元した料理を披露し国内外に新潟の食文化を発信する。