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■ 第21回 「全税共 人と地域の文化賞」
第21回「全税共人と地域の文化賞」贈呈式が、2013年2月18日 ホテル日航東京(港区)にて開催されました。
本年度は伝統芸能分野から往馬(いこま)大社火祭り保存会が受賞されました。
賞金 100万円(全国税理士共栄会文化財団) 副賞 100万円(全国税理士共栄会)
往馬(いこま)大社火祭り保存会(奈良県生駒市)
~生駒(いこま)の火祭り(往馬大社火祭り)~
往馬大社の火祭りは、聖なる火が神から人間に手渡される瞬間を具現し、見る者に衝撃の感動を与える祭りである。全国各地の数多い「火祭り」の中でも、火祭り本義の一端を伝える貴重な民俗行事である。
毎年10月第一土・日例大祭では、宵宮行事の「宵宮(よみや)火(び)・祈願木焚上(きがんぼくたきあげ)」が行われる。神の御旅所(おたびしょ)(高座)前の大松明(おおたいまつ)に、南北二地区が激しく競い合って点灯するダイナミズムには祭りの醍醐味がある。
翌日の本祭りでは、高座の中で松明二基に火が点され「火取り」が行われる。これは南北の青年二人が瞬時を競って奪うように燃え盛る松明を担ぎ、高座の七段の階段を駆け下りて御旅所を疾駆して走り抜け、南北四本の「御串(ごむし)」(すすきの束)に火を移し境外に走り去るという、すべてが早業の瞬間のクライマックスである。
また、宵宮・本祭りで演じられる「弁随(べんずり)舞(まい)」は南北四名ずつに分かれ、その手振り・舞振りも貴重である。
観光化、イベント化された「火祭り」ではなく、地域住民の「火と火の神」に寄せる敬虔な心情あふれる貴重な民俗伝承の文化であり、顕彰にふさわしいと考える。
写真提供 野本暉房 |
■ 第22期助成
①和と洋の想を聴く実行委員会(東京都杉並区)
石川県金沢市を拠点としているオーケストラ・アンサンブル金沢は、日本の伝統楽器とのコラボに力を入れた極上のアンサンブルを特長としている。
また日本の作曲家に委嘱するコンポーザースレジデンスの制度を持ち、一流の演奏家による独創的な作品は好評を博している。
②はるか(東京都世田谷区)
透明感のある響きから成熟した響きまで歌いこなす魅力的な女声合唱団であり、ノルウェーの著名な指揮者であるカール・ホグセットからも高い評価を受けている。
近年はシアターピースという、劇場全体を多角的に使用し、合唱という枠を超え演劇・朗読の要素も含む、多種多様な音楽性・響きを追及する演奏スタイルに挑戦している。
③「新しいうたを創る会」名古屋支部(三重県桑名市)
日本を代表する詩人の谷川俊太郎や作曲家の高橋悠治、三善 晃、林 光などに新作を委嘱し、歌曲や舞台作品、声によるアンサンブル作品を誕生させた。
次回作は全国の音楽愛好家に呼びかけ会員を募り、委嘱し完成させた作品であり、プロの音楽家と地元の社会人中心のアマチュア合唱団約100名が参加する幅広い活動を行うことで、人材育成にも役立っている。
④劇団福祉座(愛知県北名古屋市)
かつて尾張平野の農村部において消防団や青年団により行われてきたむら芝居・素人芝居の伝統を復活させるため1987年に設立された。
むら芝居の伝統を引き継ぐという劇団創設の経緯から観劇は無料とし、会場を選ばないというフットワークの良さを信条としている。
地元にちなんだ時代劇の脚本は市の職員が書き、監督も務め、キャストは脚本ごとに市内でスカウトするなど、地域に根付いた活動を続けてきたが、2009年からは全国に活動範囲を広げるなど進化を続けている。
⑤トロールの森実行委員会(東京都杉並区)
平成14年から都立善福寺公園を主会場として毎年開催される野外美術展であるが、今年から地域住民の自主的運営により同区教育委員会の後援及び地元小学校、民間企業、メディア等の協力のもと開催される。
地域住民の理解と協力を得て、経験と実績を重ね、地域を象徴するイベントになっている。
⑥小島 晴子(東京都町田市)
2005年以降、年に1本のペースでソロダンス公演を行ってきた。幼い頃から培ったダンスの幸福感と多摩美術大学で学んだ日本画への敬意、そして身体の可能性を描きだしたいという強い想いが詰まった作品である。
今年9作目のソロダンス公演は、新たな試みとして電子音楽による即興演奏と共演し、音楽がダンスの単なる伴奏に終わるのではなく、音楽とダンスの新たな関係を築き、さらにこれまでにない新たな表現を提示する。
⑦ちちぶ国際音楽祭実行委員会(埼玉県秩父市)
海外の世界的な演奏家・指導者を招聘し、一週間かけて未来ある若者に室内楽(楽器とピアノによる合奏)の教育プログラムを行う。
受講生は指導者とともに音楽造りをし、ステージで演奏する過程を通し新しい発見をしていく。また、受講者の中から今後の音楽界を担っていく指導者となるべく、きっかけ作りにもなる価値のある音楽祭である。
⑧財団法人和光市文化振興公社(埼玉県和光市)
地元の詩人・清水かつらのエッセイをモチーフとして制作した童謡詩劇うずらは、4年かけて市民参加の実行委員会形式を作り上げ2010年に初演した。
地域で育む創作オペラである詩劇うずらの再演を繰り返し実行することは、前回の参加者が感動を伝え、更なる参加者が生み出されバトンがつながる、地域文化の継続・発展・発見になる。
また和光市独自のオーケストラを結成し、定期演奏会のほか学校でのアウトリーチや指導を行う。
⑨特定非営利活動法人ものづくり生命文明機構(神奈川県横浜市)
東日本大震災後、気仙沼で24年間続いている漁師による植林活動(豊かな森によって養分が海に流れ込み、海藻やプランクトンという「海の森」により海の生物を育む)に震災復興と地域再生の本質的な道筋を見出し共に活動している。
森・川・海のつながりが健全なら美しい故郷は甦る、という「森里海連環」による祈念チャリティコンサートを企画している。
⑩NPO法人劇場創造ネットワーク(東京都杉並区)
世代や好みのジャンルを問わず、できるだけ多くの観客が音楽と演劇の魅力に触れることができるよう、名曲の演奏に加え、その名曲が生まれた時のエピソードを関係のあった人々によって語られる物語にすることで、演劇と音楽双方のファンが楽しめる内容構成で毎年上演している。
同区の小学生を招待する団体観劇事業や、地域と連携したフェスティバルを開催するなど地域に根差した活動もおこなっている。
⑪東川町写真の町実行委員会(北海道上川郡)
1985年自治体初の「写真の町」を宣言し、写真文化を中心として町づくりや地域の活性化に取り組み、東川町国際写真フェスティバルは今年で29回目を迎える。
フェスティバルには今後の写真界を担う若者や、全国の写真愛好家などが参加し、人と人・自然・文化の繋がりや大切さについて認識を深め、写真が与える力や町をつくる力を育成することを目的とする。
また、写真の持つ可能性や魅力を実感できる場所として、内外から高い評価を受けている。
⑫クリエイティブ・アート実行委員会(東京都港区)
港区という変貌著しい土地に生きてきた人々が、自分の古い写真を自ら語るというオーラル・ヒストリー的な、日本では数少ないコミュニティ・アート・プロジェクトである。
コミュニティが崩壊している大都市の中で、人々とアーティスト達の創造活動を通じ、新たな町の在り方を模索しようとするこの活動は2002年から4年間開催され、2011年からはコミュニティ・アート活動として継続することの必要性を感じ再開され、地域密着型活動として開催されている。
⑬あまわり浪漫の会(沖縄県うるま市)
平成12年、地域興しを目的に発足し、現在は市内の中学校、高校の生徒160名が所属しており、週3回程度の稽古や各種施設でのワークショップへ参加するなど広範囲に活動している。
稽古では技術面だけでなく「心づくり」を重視しており、舞台づくりを通して郷土の歴史と伝統文化への理解を深めるなど青少年の人材育成に寄与している。
⑭田中 幹(京都府京都市)
2011年、阪神大震災以後閉鎖された旧尼崎警察署を舞台に、地域住民と共同で作業し大規模なアート展を開催することで、住民が忘れがちだった地域の記憶を呼び覚ました。
今回は瀬戸内の豊島において現代アート展を開催するが、アートをきっかけに、その地域の住民さえも見落としてきた物事を再発見し、地域の活性化を促し瀬戸内国際芸術祭を補完する意味でも大きな役割を果たすことが期待できる。
⑮一般社団法人中川運河キャナルアート(愛知県名古屋市)
名古屋の希少な水辺である中川運河沿いの企業や周辺住民との関係作りに日々取り組み、アートイベントを通じて文化創造・共有の場として育てる運動をしている。
作品を通じ市民が文化へアクセスする機会が増えることで、日常の空間から脱皮できるだけでなく、都心部と海を結ぶ中川運河をメイン舞台として、蓄積されたものづくり文化を未来志向のアートへ橋渡しする活動を積み重ねている。
①平田青虎会(岩手県釜石市)
平田虎舞は約780年前、閉伊頼基が将兵の士気を鼓舞するため虎の格好で踊らせたのが始まりとされる。
昭和21年に結成されてからは、地元や地区の祭りに参加するほか、民俗芸能イベントにも積極的に参加し他団体等との交流をはかるほか、小中学生への伝承活動も活発に行っている。
東日本大震災で用具等が流出し、甚大な被害を受けながらも活動を続けていた同会は、被災者に希望と元気を与え続けている。
②神楽ふれあい実行委員会ヒロシマ(広島県広島市)
平成19年に青少年の健全育成を目的に発足し、体験教室で練習する神楽を発表する鑑賞会を毎年開催している。
近年、子ども達のいじめや自殺、非行や犯罪など様々な問題が深刻化しているが、日本古来から伝承されている郷土芸能の神楽を通じて、礼儀作法の大切さや人との連帯心、礼節を学びながら郷土芸能の神楽を継承する子ども達の育成を行っている。
③町屋百人衆(三重県津市)
自分達の町を誇れる町にしたい、という有志が集まり平成7年に結成された。
地元にまつわる雨乞い神事にちなみ全長55メートルの巨大龍を自作して、地域にある千王神社の夏祭りに合わせ町内を3時間かけて練り歩く。
この行事を次の若い世代に引き継ぎ、伝統行事に発展させ、地域の活性化に寄与していく活動をしている。
④特定非営利活動法人禮之会(沖縄県うるま市)
沖縄の伝統芸能を次世代に普及・継承する方法として、沖縄芝居と舞踊・バレエなど異なるジャンルの芸能と一緒に公演を行うことで、若い世代をはじめ県外や海外など多くの人々に伝統芸能の理解を広めてきた。
また、ウチナーグチの日本語解説を入れながら作成した芝居の「短編ムービー」をYoutube動画で配信し、芝居を通して沖縄の言語文化・風俗を世界に発信するという、新しい試みを行っている。
⑤小豆崎町「野孤おどり」保存会(長崎県諫早市)
小豆崎町の地域において保存継承されている、長崎県内でも数少ない郷土芸能である。
昭和初期から現在まで、町民の一部愛好者の自発的な活動によって、数回のみ地域のイベントなどで披露されてきた。
諫早市の代表的な伝承芸能には「浮立」があり、各地域でそれぞれ継承されているが、「野孤おどり」は異色の芸能として小豆崎町と飯盛町にのみ継承されている。
⑥池田中囃子保存会(茨城県久慈郡)
池田中地区に古くから伝承されている祭囃子の保存継承及び後継者育成を目的として、昭和57年に発会された。
成人会員の技術向上を図り、次代を担う後継者育成のために小・中学生を対象とした教室を開講、週1回のペースで現在15名の子供達に指導している。
日頃の練習の成果を高齢者施設等で披露することにより、世代間を超えた人間関係を醸成するなど、地域に多大な好影響をもたらしている。
①法華三郎信房(宮城県大崎市)
法華系は奥州藤原氏の鍛冶集団の一つで、藤原氏滅亡後は各地に分散し、鎌倉末期に大和国高市郡(奈良県)に移り保昌貞吉・貞宗は大和伝保昌派を完成させた。
松山の法華氏は伊達藩の刀工名匠として代々継承され、昭和30年頃保昌貞吉らが創案した鍛造法の復元に成功した。
一般的な工法として知られる備前派とは異なる高度な技術を有する大和伝の継承に力を注いでいる。
東日本大震災により、材料の和くず(鉄)が失われた。
②泉田 之也(岩手県九戸郡)
北限の民芸と形容された小久慈焼窯元の岳芳に師事、1955年に野田で窯を築く。
野田窯は故金子量重氏が推進したアジア民族造形館の一棟として設立された。
泉田氏の作品はその民芸感覚と現代造形意匠とが融合したレベルの高いもので、朝日陶芸展において二度もグランプリを受賞するなど、現代造形作家として知られている。
東日本大震災により、穴窯を覆う屋根が倒壊し窯自体もダメージを受けた。
③田中 二三男(岩手県盛岡市)
南部鉄瓶の制作技術は、本体を制作する鋳造技術と袋づるの鍛金技術、錆止め及び色づけの漆かけ技術の行程に分かれる。
本体及び漆かけは作者により行われるが、鉄瓶の命ともいうべき袋づるの制作は特別な熟練技術を要するため職人により行われる。
現在、この技術を継承する職人は水沢市内にも三人いるが高年齢化と後継者が定まっていないため、いずれは田中氏と弟子の二人のみが保存者となる。
④江田 蕙〔23代目江田嘉茂左衛門〕(宮城県登米市)
松笠風鈴は形が松笠に似ていることから命名され、約200年前から父子相伝の製法により伝わり、県の伝統的工芸品にも指定されている。
純粋な砂鉄を用いて鋳造し、鉄がまるで湯のようになる1800度まで温度を上げるのに3~4時間、室温40度の仕事場で10時間以上格闘するが、満足する出来栄えは5分の1にも満たない。
薄く仕上がり軽やかな音色の松笠風鈴は、砂鉄の変化の極限に生まれる国内唯一の風鈴であり、その技術を絶やすことなく繋ぎ続けることが重要な課題である。
⑤雄勝硯生産販売協同組合(宮城県石巻市)
雄勝硯の原石となっている雄勝町の水成岩は、2~3億年前の古生代に属し光沢・粒子の均質さが優れており、特性として圧縮・曲げに強く、化学的作用や経年変化への耐性が高い。
また、この石は平成24年10月に完成した新・東京駅の屋根のスレート吹きにも使われている。
東日本大震災により原石採掘現場が破壊され、職人も失われたが、バラック事務所内で2人の青年により業務が続けられている。
⑥杉村 聡(奈良県奈良市)
漆(japan)は世界に誇れる日本工芸である。緻密な計算と確かな技術力、そして細心の注意力、いずれか一つが欠けても完成しない、偶然のない工芸である。
奈良の文化財や歴史をテーマに、東大寺・正倉院などの文様を伝統的な蒔絵の技法を使い、茶道具や香合、炉縁等から大きなものでは天平棚まで制作している。
また、多くの人に漆芸の素晴らしさの理解と、漆器を普段使いしてもらえるよう、年に1回ほど作品展を行い発表している。
⑦吉川 彰英(島根県松江市)
島根県の伝統工芸品である出雲石灯ろうは、宍道町来待地区で産出される来待石を原材料としている。
来待石は1,400万年前に形成された凝灰質砂岩のため軟らかく加工しやすいが、風化しやすく最後は砂となり土に戻る。最近は、寿命の長い中国産の御影石が多くなり、来待石灯ろうの需要が激減し厳しい状況である。
吉川氏は国内外でただ一人、来待石を焼成する技術を持ち、現在の需要に相応しい新しいデザインの石灯ろうを開発、地元職人や学生達と地域の活性化及び人材の育成に取り組んでいる。
①社団法人全国公立文化施設協会(東京都中央区)
公立文化施設は、市民に優れた舞台芸術の鑑賞機会を提供すると共に、市民の芸術文化活動への支援など文化性豊かな地域社会づくりをめざし様々な活動を行っている。
これら活動を展開していくためには、各施設に舞台芸術に関する専門的知識を有する職員を配置することが重要であるが、人材の不足及び今年度制定された「劇場・音楽堂等の活性化に関する法律」等の環境の変化が早いため、一層の知識の付与が必要とされることから、各施設に関わる人材の育成により力を注いでいる。
②財団法人静岡県文化財団(静岡県静岡市)
県内唯一の県立複合文化施設を管理運営し、施設の機能向上や公立文化施設のネットワークづくりを目標としている。
2010年から開催している文化施設職員の中でも若手の職員を対象に、少人数制で取り組むアートマネージメントセミナーでは、第一線で公立文化施設に携わる講師を招いた質の高いプログラムを組み立て、スタッフのスキル向上と交流を目的とし、そのセミナーで学んだスキルを各文化施設の主催事業に生かすことに重点をおいている。