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■ 第33期(2023年度・令和5年度)
第32回「全税共 人と地域の文化賞」
第32回「全税共 人と地域の文化賞」は食文化分野から松下智氏が受賞されました。同賞の贈呈式は令和6年2月20日帝国ホテルにて執り行われ、賞金100万円及び副賞100万円が贈呈されました。
松下 智(愛知県)
~喫茶文化に関する調査ならびに茶文化の振興~
松下智氏は1930年に長野県に生まれ、愛知学芸大学(現、愛知教育大学)を卒業後、高等学校教諭を勤めるかたわら、茶の育種学的研究にすすみ、日本各地の茶を調査、研究するところから、茶の製造、民俗、歴史へと研究領域を広げる。
1970年には茶の文化振興のために社団法人豊茗会を設立し、茶文化の普及につとめる。
また、1972年より海外の茶の調査をはじめ、ビルマ(ミャンマー)、セイロン(スリランカ)、インド、ネパールなど南アジア、東南アジアの調査、さらに台湾、中華人民共和国、韓国の調査をのべ100回以上おこない、茶の源流と各地の茶の特性、文化、歴史の研究をおしすすめた。
これらの調査、研究は60年に及び、その成果として20冊にならんとする著書を出版する一方、調査の間に収集した各国の製茶器具、衣服、飲茶道具など2,000点余の資料は袋井市茶文化資料館に寄贈され松下コレクションとして収蔵展示されている。
氏が最初に出版した『日本の茶』は、はじめて日本各地に散在する緑茶以前の茶の生態を明らかにし、それに伴う風俗を紹介するという独創的な視点をもつ書物である。その後、実に精力的にアジア各地を単独で調査し、かつては入国の困難であった地域に、日本人としては最初の調査をおこなうなど、並はずれた行動力をもって研究をすすめた。従来は茶の起源といえば中国雲南省を中心としてきたのに対し、貴州省の少数民族がその普及に大きな役割を果たしたのではないか、という独自の見解を提出するなど、約半世紀にわたって、喫茶文化の源流、また各国の茶の特質、民俗研究について大きな業績をあげていることは特筆大書すべきと考える。さらにそれを基として、日本各地の茶文化の振興につとめている。
氏はいわゆるアカデミズムの世界に身を置いたことはわずか数年に過ぎず、その人生の大半を高校教師という一般の生活者として過ごしながら、これほどの業績をあげていることは驚異的である。