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■ 令和元年度 (2019年度・第29期)
第28回「全税共 人と地域の文化賞」
第28回「全税共 人と地域の文化賞」贈呈式が、2020年2月17日帝国ホテル東京にて執り行われました。
本年度は伝統芸能分野から隠岐神楽が受賞されました。
賞金100万円(全国税理士共栄会文化財団)副賞100万円(全国税理士共栄会)
隠岐神楽(島根県)
~隠岐神楽の保存と継承~
隠岐神楽は島前(どうぜん)神楽と島後(どうご)神楽に分けられる。太古からの神事舞である神楽が、出雲の佐太(さだ)神社の例祭にて奉納される佐陀(さだ)神能(しんのう)として様式が成立し、それが中国地方一帯から九州、更に全国に伝播された。島根県の代表的な神楽には出雲神楽と石見神楽があるが、隠岐神楽は「社家(しゃけ)」と呼ばれる神楽師により伝承され出雲流神楽の古式を今に残している貴重な伝統芸能である。
隠岐島後神楽の久見(くみ)神楽は佐陀神能の古態を残し、地域の祭事や伊勢命(いせみこと)神社の祭礼等において賑々しく演じられ島後島民の結束の象徴となっている。巫女による古風な神招(かみお)ぎの舞のある前座の舞の後、猿田彦の舞、八乙女神楽、鬼退治などが演じられる。
隠岐島前神楽は島前三島(西ノ島、中ノ島、知夫里島(ちぶりじま))の各集落の神社において奉納される。常設の神楽殿は無く祭事に合わせ仮設の舞台が組まれ、舞台は2間四方の8畳間を基本としその中の方1間(ほういっけん)(2畳)で舞うのが特色であり、天井には紙垂(しで)で飾られた玉蓋(ぎょくがい)が吊るされている。演目の最後に降りてくる玉蓋は神の降臨を象徴、2畳の舞場は人間が住む地上を表し神の祝福がその全てを覆うという意味を感じさせる。
島前神楽は「舞い」と「能」とに大別され夜を徹して演じられた。明け方に巫女が神楽の最重要である神懸りによる託宣を行ったが、明治になり神懸りが禁じられたため現在は「神子神楽(みこかぐら)」にかすかに形式を残すのみである。
船上での舞いや巫女が1歳未満の乳児を抱き無事の成長を祈る「舞い児(まいこ)」は次の世代のお披露目も兼ねており今も盛んに行われているなど、神楽が地域と一体となっていることがうかがえる。
演戯だけでなく神事の要素も保存されており、他では見られない古式の演目が残っている隠岐神楽は顕彰に値するものである。