エンブリは田を掻き均す農具エブリ(柄振・えぶり)の訛った語で、このエブリを象った鍬台やならし板などを手にした男性の太夫3~5名が、歌い手と囃し方の楽に乗って稲の耕作のさまを模擬して踊り、踊りの合間には子供達による「松の舞」「えびす舞」「エンコエンコ」の踊りも演じられる東北地方に多い田植踊りの一類です。
新春に当たって豊作になるさまを模擬し、当年の豊穣の実現を祈るという農耕生産を社会生活の基幹としたわが国の伝統的な民俗行事で、古来の神事的性格を堅持しつつ多彩な音楽と野趣横溢の踊りは見るものを魅了します。
藩政時代には村単位で組織し、小正月に各組が村内の各戸を巡回し豊作と一家息災を予祝しましたが、明治維新後卑俗な風習とみなされ中断。しかし明治14年地元民の熱意により復活した後、新暦の2月17日から3日間に祭日を変更しました。全国的にも日本の農耕生産と農民生活の風俗を芸術的に表現した芸能と高く評価され、見学に訪れる人も増えています。
各地の民俗行事や芸能の多くが衰退・消滅するなか、保存伝承体制をいち早く整え、歴史の究明・記録の作成・後継者養成を始め地域との連携等の事業を進めつつえんぶりを素材としての新たな音楽、舞踊の創造作業にも手を貸す等、わが国民俗芸能の伝承のあり方の一つの模範を示すものとして、推奨されるものです。